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首都圏賃料が過去1年の最高値を更新、5駅で明暗分かれる
東京カンテイ(TOKYO KANTEI、不動産調査会社)が9月16日に公表した2026年8月の三大都市圏における分譲マンション賃料データによれば、首都圏の平均賃料は4,242円/㎡で前月比+0.8%、3カ月連続で上昇し、過去1年の最高値を更新。東京都は平均4,985円/㎡で、5,000円目前の水準。
不動産投資の判断は「都県平均」に留めるべきではありません。urbalytics の rent_stats で同一都県・同一対象を「駅」粒度まで落としてみると、代表的な5つのハブ駅の動向に明確な分化が見られます。

一、元データの要点:4都県のうち3県が過去1年の最高値を更新
東京カンテイのデータは「分譲マンションを賃貸募集する際の賃料を㎡単価に換算」したものを基礎とし、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の主要行政区における賃貸募集物件を網羅しています。
8月データのポイント:
首都圏平均:4,242円/㎡(前月比+0.8%)。3カ月連続で上昇し、過去1年の最高値を更新。
東京都:4,985円/㎡(+0.4%)。3カ月連続の上昇で、5,000円まであと15円。千代田・中央・港など都心5区の高水準サンプルが平均を支えています。
神奈川県:2,910円/㎡(+0.6%)。上昇基調が続き、過去1年の最高値を更新。
埼玉県:2,409円/㎡(+1.7%)。前月比の伸び率が最大で、過去1年の最高値を更新。
千葉県:2,230円/㎡(-0.4%)。5カ月連続の下落。要因は、千葉市内で賃料水準の高い行政区において、築7年以内の比較的新しい物件サンプルが減少したためです。
同じ月報からは「首都圏賃料が最高更新」とも「千葉は5カ月連続下落」とも読めます。鍵は観測の粒度にあります。
出典:R.E.port 2026/9/16「首都圏分譲マンション賃料が過去1年の最高値を更新」/元データ:東京カンテイ「三大都市圏・分譲マンション賃料 月別推移(2026年8月)」。

二、urbalyticsの駅別データ:5駅の推移と物件数の差異
東京カンテイの「都県平均」を、urbalytics 上の代表的な5つのハブ駅まで分解すると、直近5四半期の坪単価推移は下表の通りです。データは urbalytics rent_stats の「マンション」区分、trendUnit=quarter、過去1年レンジ。初出の注記:1坪≈3.3㎡。
駅 物件数 1年前坪単価 最新坪単価 変動率 渋谷 500 2.13万円 2.11万円 -0.94% 新宿 168 2.45万円 1.77万円 -27.76% 品川 333 2.38万円 1.90万円 -20.17% 横浜 473 1.61万円 1.27万円 -21.12% 大崎 382 1.96万円 1.69万円 -13.78%
表中の「最新」は2026年Q3(9月初旬までの4週移動平均)、「1年前」は2025年Q3の同期間。出典:urbalytics rent_stats(物件区分=マンション、trendUnit=quarter、過去1年)。
この表で最も重要なのは、変動率だけでなく物件数です。
物件数は当該駅の賃貸募集マンションのサンプル規模を示します。500件の渋谷と168件の新宿では統計的基盤が全く異なります。物件数が多い駅は、個別の高値・安値物件の出入りが平均値に与える影響が小さく、データは安定。物件数が少ない駅は、平均が個別物件の変動に左右されやすく、ボラティリティが大きくなります。
渋谷のデータが最も安定。500件という最大サンプルに対し、-0.94%の微減は統計上ほぼフラットです。これは過去1年、渋谷周辺の賃料が概ね横ばいで、東京都全体の上昇傾向とも整合的であることを示します。
新宿の物件数は最少で168件。サンプルが小さく、四半期ごとに物件構成が変わると平均の変動幅が増幅されます。新宿の-27.76%という変動率は、実勢賃料が3割近く下がったというよりも、サンプル構成の変化による平均値のブレと解釈すべきです。
品川(333件)と大崎(382件)は中位のサンプル規模で、信頼性も中程度。横浜(473件)は渋谷に近いサンプル量ですが、-21.12%という変動は依然として大きく、過去1年で募集物件の価格分布に構造的な変化が生じたことを示唆します。
投資判断への直接的な含意は明確です。駅選定において、物件数それ自体が市場の厚みの指標。物件数が多い駅ほど賃貸市場が厚く流動性が高く、平均値の信頼性も上がります。
三、投資判断への示唆

1. 渋谷は5駅の中で賃料が最も安定。500件のサンプルに加え変動率がゼロ近傍で、渋谷周辺の賃貸需要構造は安定しています。渋谷周辺で2015年以降竣工のマンションを保有している場合、賃料維持の前提を引き上げられます。
2. 物件数が少ない駅の変動率は要注意。新宿の168件というサンプル規模では、平均が個別物件の影響を受けやすい。投資のスクリーニングでは変動率の順位だけでなく、物件数を第2の条件に。物件数が安定し変動率も小さい駅のシグナルが最も信頼できます。
3. 首都圏全体の賃料は上昇トレンド。東京カンテイの都県平均は3カ月連続で上昇し、4都県中3県が過去1年の最高値を更新。駅別データの価値はこのトレンドを否定することではなく、トレンドの下でも各駅の市場の厚みと価格変動特性が異なると示す点にあります。タイミング選びよりも駅選びが重要です。
四、urbalyticsでこれらのデータを追跡する

urbalytics の rent_stats は、「駅」「区」「市」「都道府県」の4階層での四半期推移を提供し、物件種別(マンション/戸建/土地付き)、専有面積帯、築年帯での切り分けに対応しています。
月次レビューの推奨フロー:
まず対象「駅」の物件数を確認し、データ基盤の安定性を判断。
次に坪単価の変動率を、物件数と併せて解釈。物件数が安定(>300件)かつ変動率が小さい(<5%)駅のシグナルが最も信頼できます。
変動率が異常に大きい駅は、urbalytics でより細かい粒度(面積帯・築年帯)に切り替え、特定のクラスの価格変動が平均を牽引していないかを確認。
ニュースの見出し「首都圏が最高更新」は毎月のように現れます。重要なのは、その「高値」を牽引しているのはどの「駅」か、自分が注目する「駅」の物件数は安定しているか。物件数と変動率をセットで見る方が、単一の数字を見るよりはるかに堅実です。
出典:
1. R.E.port(2026/9/16)「首都圏分譲マンション賃料が過去1年の最高値を更新」:https://www.re-port.net/article/news/0000082907/
2. urbalytics rent_stats(物件区分=マンション、trendUnit=quarter、過去1年、5駅の代表サンプル)。
3. 図表「駅別マンション坪単価の推移:首都圏5駅比較」は、上記の urbalytics データを基に matplotlib で作成。
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記事中の写真:Shibuya Station North 2 ノーマルエディタ/CC BY-SA 4.0(トリミング) Wikimedia Commons·Yokohama Station 20240 Sakura Torch/CC0(トリミング) Wikimedia Commons·Shinagawa Station - Aimaimyi/CC BY-SA 3.0(トリミング) Wikimedia Commons



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